The Hollywood Reporter(2020年10月27日付)は、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の配信交渉が成立しなかった背景を伝えています。
複数筋からの情報では、Appleが検討していた同作配信の提示額は1年契約で3億5千万ドルから4億ドル。これに対し、MGMの希望額は6億5千万ドルから7億ドルで、8億ドルとの指摘もあったそうです。
MGMの配信検討とその希望価格設定の背景にあるのは、まず2億5千万ドルの製作費。MGMは製作費を借りており、利子返済だけで毎月約100万ドルかかるとのこと。アンナプルナが出資している配給会社ユナイテッド・アーチスツやユニバーサル・ピクチャーズへ支払うライセンス料も必要に。マーケティングには既に5千万ドル以上が費やされています。
また、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』では興収に応じたギャラのボーナスが、ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、キャリー・フクナガ監督などに支払われる契約になっているとのこと。大ヒットが予想されている『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が劇場公開を見送って直配信になれば、クレイグらのギャラが本来の目論見よりも減る可能性があると思われます。
MGMと映画007シリーズの著作権を共同所有しているイオン・プロダクションのバーバラ・ブロッコリは、MGMから配信計画を事前に知らされていなかったそうで、その動きを知った際には反対した模様。ブロッコリが観客のシアター・エクスペリエンスやパートナー・ブランドとの協力関係を重視していることなどが、反対理由のようです。
Netflix幹部は007がキラー・コンテンツであることは認めながらも、毎月007のような映画を5億ドル以上で買うのは割りに合わない、と指摘。それだけの予算があればオリジナル映画製作に注力したいとのことです。