マーティン・キャンベル監督らスタッフが映画『007/カジノ・ロワイヤル』のカジノ・シーン舞台裏をPolygon(2020年11月26日付)に語っています。
『007/カジノ・ロワイヤル』を象徴するカジノ場面。イアン・フレミングの原作では、カジノ・ロワイヤルがあるのはフランスで、ゲームはバカラでした。
一方の映画版では悪役ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)が、資金調達のためにテキサス・ホールデムのトーナメントをモンテネグロのカジノ・ロワイヤルで開催。これに敵の陰謀を探るジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が参戦します。
ポーカー経験が皆無だったキャンベル監督にとって、カジノ・シーンの撮影は最も厄介だったようです。しかし、完成したシーンは「非常に説得力がある」と満足している様子。これは単なるカード・ゲームではなく、目で相手を殺る闘いだと表しています。
カジノ・サロンのセットが組まれたのはチェコの首都プラハにあるバランドフ・スタジオ。キャンベル監督は撮影前の予習として『シンシナティ・キッド』や『5枚のカード』をチェック。ポーカーに熟知したプロデューサーのマイケル・G・ウィルソンからの特訓も受けたそうです。
『007/カジノ・ロワイヤル』で編集を担当したスチュアート・ベアードは、メル・ギブソン主演『マーヴェリック』での経験を基に、目の動きやクローズアップなどあらゆる映像を撮っておくよう、監督にアドバイス。
同作でポーカー・コンサルタントとして雇われたのがトム・サムブルック。演劇学校時代からポーカーにハマり、プロの道へ。ヨーロッパの大会では優勝も経験しています。2005年、所属エージェンシーを通じ、ヨーロッパで行われるトーナメントを監修してほしいとの依頼が。仕事内容がよく分からないままプラハへ赴くと、そこで待っていたのがマイケル・G・ウィルソン。彼に会って初めて仕事は007映画だと知ることに。
サムブルックは、バハマやモンテネグロのゲーム場面に参加する俳優達を相手に、バランドフ・スタジオの地下でゲームのトレーニングを開始。彼の話では、経験を積んだポーカー・プレイヤーは動きに無駄がないとのこと。
オフの時間にはウィルソンがゲームを主催し、スタッフも参加してルールを勉強。スチュアート・ベアードは開始15分でダニエル・クレイグに負けてしまったのだとか。また、プラハ市内のカジノへ見学に行った俳優らもいたそうです。
カルロヴィ・ヴァリでの撮影が始まる頃には、マッツ・ミケルセンやジェフリー・ライトなどのキャストはポーカーが病みつきに。撮影の合間、ずっとポーカーを続けていたそうです。また、サムブルックは、マッツ・ミケルセンにチップを指で回す仕草のレッスンもしたとのこと。
キャンベル監督はディーラー役にオーストリアでカジノ・インスペクターを務めるアンドレアス・ダニエルを起用。彼のディーラー経験が映画の中で大いに役立ったそうです。
撮影が9日間に及んだカジノ・シーンのハイライトは3回で、いずれもボンドとル・シッフルのショーダウン。最初のハンドはボンドがわざと負け、ル・シッフルの癖を掴みます。次もボンドの策略を見抜いたル・シッフルが勝ち。最後はボンドがストレート・フラッシュでトーナメントに勝利します。
元々の台本では、ボンドがル・シッフルの癖を見つけた直後、オールインの勝負へ出ることに。しかしサムブルックは、ボンドなら最後まで敵を焦らすだろうと考え、キャンベル監督に台本を変えるよう提案したとのことです。