完成した映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』には、ダニー・ボイル監督の生み出したストーリーの要素が残っているようです。

これが判明したのは、007映画の公式解説本『The James Bond Archives: No Time To Die Edition』(2021年10月発売予定)の編集者、ポール・ダンカン氏のツイート(2021年8月27日付)から。

ダンカン氏は解説本編集のため台本を読んでおり、ダニエル・クレイグ、プロデューサー、監督など様々なスタッフにインタビューを実施。撮影現場も見学しており、その制作過程を熟知している人物。

同氏のツイートによると、この解説本では、ダニー・ボイルのストーリー要素が最終的にどう残ったのかを説明しているそうです。

脚本作りのプロセスを振り返ると、元々『Bond 25』の仮題で呼ばれていた『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の脚本を手がけていたのは、プロデューサーお抱えのニール・パーヴィス&ロバート・ウェイドの二人。

「素晴らしいアイディア」を思いついたというダニー・ボイルが監督に就任すると、彼の妙案をベースに、盟友ジョン・ホッジが脚本を書き始めます。

ボイル&ホッジ版の脚本は4バージョン以上が作られますが、ダニエル・クレイグやプロデューサーは、その内容に納得できず、「創造性の相違」を理由にボイルとホッジは降板。

そして、パーヴィス&ウェイドのコンビが呼び戻され、再び作業を開始。この時点で脚本内容は当初彼らが書いていた内容に戻ります。

その後、ボイルの後釜としてキャリー・ジョージ・フクナガが監督に就任。プロデューサーからの強い要望があり、脚本は一から書き直すことになったと言います。

フクナガ監督は膨大な脚本作業のほとんどを新たに選出する脚本家へ任せようとしていましたが、時間的制約などがあり、自身が脚本家を兼任することに。結果的にフクナガ監督はパーヴィス&ウェイドの協力を得ながら、主導的な役割を果たすことになります。

フクナガ監督就任後に刷新されたはずの脚本ですが、ポール・ダンカン氏が指摘するように、ダニー・ボイルの影響がある程度残った様子。

ボイル案はロシアとの新冷戦がテーマになっていた模様で、パインウッド・スタジオではロシア製ロケットのセットが途中まで制作。カナダではロシアの収容所のセット建設が予定されていました。

ボイル降板を受け、これらセット作りはキャンセルされましたが、ラミ・マレックの演じる悪役サフィンはロシア系との設定の模様。また、ロシアが舞台の一つにもなっており、ボイル案が影響している可能性も。

具体的にどのような要素が完成した映画に残っているのか、解説本の出版が待ち望まれます。

なお、フクナガ監督のもとで、スコット・Z・バーンズが脚本のリライト作業に参加。彼の名前は一時期公式発表されましたが、最終的にはクレジットから外れることに。

ダニエル・クレイグの要請で加わったフィービー・ウォーラー=ブリッジは、脚本の全体的な磨き上げを担当。プロデューサーからは次回作『Bond 26』への続投を誘われている模様です。