仏雑誌のELLE(2021年10月7日付)は、オンライン版編集長のEmma Defaudが娘Coline(コリーヌ)について執筆した記事を掲載しています。
Coline Defaudは映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で少女時代のマドレーヌ・スワンを演じました。この記事は、そのオーディション過程や撮影の様子などの詳細を伝えています。
ColineにiPhoneを貸して欲しいとせがまれたことがあったが、それはColineがネットでオーディション情報を検索するためだった。
パリで第2段階となるオーディションにはColineの父親が付き添った。その時、秘密保持契約に署名したが、ようやく映画のタイトルは『Bond 25』だと分かった。
次のオーディションは、ユーロスターでロンドンへ向かった。パインウッド・スタジオでは3つのステージに分かれ、スタント・チームとリハーサル。短いセリフもあったが、ほとんどは走ったりジャンプをした。プールで泳いだ後、キャリー・フクナガ監督と面談。その日の最後、他の3人の候補者も同じ部屋に集まった。別れ際にお土産を渡された。中身は香水やジェームズ・ボンドのFunko POP!などが入っていた。娘には何の映画なのか伏せていた。
翌朝、電話が鳴り、娘の採用を知らされた。Colineが子供のレア・セドゥを演じることが決まった。
それからユーロスターは何度も乗ることになった。トレーニングやリハーサルでパリとロンドンを何往復もした。キャリー・フクナガ監督はフランス語が流暢で、娘と二人だけで身の上話などもしていた。Colineの10歳の誕生日には、サイン付きのカチンコがプレゼントされた。
弾の装填・射撃など銃の扱い方も教わった。水深10メートルのプールではスキューバ・ダイビングや減圧についても学んだ。インストラクターは英語で指示し、私がフランス語に通訳した。
マドレーヌ少女部屋のセットでは、彼女に何のゲームをさせるか話し合われていた。フクナガ監督は絶えず調整を加えており、私に「フランス語でこれはどう言うのか?」と何度か尋ねてきた。マドレーヌは人里離れた場所で育っていて、想像上の友達がいるという設定。彼女のつま先には小さな顔が色々とペイントされているが、これは家族を象徴している。
Colineはマドレーヌの母親役Mathilde Bourbinとすぐに打ち解けた。実の母親である自分も含めた3人で夕食をとった。 1階での撮影前に監督がColineへ指示を出す際、自分は2階にいて様子を伺っていた。
ノルウェーの湖での撮影最終日は複雑なシーンで厄介だった。氷が溶け始めて時間もなかった。Colineの最後のテイクがうまく決まると、スタッフから拍手がおきた。Colineはトレーラーに戻ると、母親役のMathildeの腕の中で泣いた。
ホテルのロビーではラミ・マレックが腕を差し伸べてColineの名前を呼んでいた。娘がマレックのところへ走っていくと、マレックはハグして「グッド・ジョブ」だと褒め称えていた。そばに居た監督も同意していた。
パインウッドのウォーター・タンクでは、ノルウェーの氷が持ち込まれて撮影が続いた。Colineの姿が水中の氷越しに見えた。コスチューム・デザイナーはオーディションの様子もチェックしており、Colineの泳ぎ方を評価していた。
パインウッドでの撮影最終日は、コテージのセットでColineが銃を撃つ演技をしていた。小さな娘が巨大なIMAXカメラを前に動く様子が見えた。複雑なシーンで私は通訳を務め、娘をサポートした。この経験を経て、娘の成長を感じた。
パンデミックのために映画の公開は遅れた。その間に、娘の身長はレア・セドゥに近づいた。Colineの今の夢は日本アニメの声優になることだ。
Colineは『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のオープニング・シーンに出演している。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたプレミアでは、そのシーンの終わりで会場全体に拍手が湧いた。その時、Colineは隣の両親の手を握った。