The Hollywood Reporter(2022年11月8日付)は、『007/スカイフォール』の米国公開(2012年11月9日)10周年記念日を目前に実施された、サム・メンデス監督とのインタビューを掲載しています。
MGMは『007/スカイフォール』の制作準備中に破産。その時のサム・メンデスや脚本家のニール・パーヴィス&ロバート・ウェイド、ジョン・ローガンらは法的な問題のために脚本を書けなかったそうですが、ストーリーを色々と考える時間はあったようです。
メンデスらが考えていた主なアイディアは二つ。ジュディ・デンチが演じるMの死と、ジェームズ・ボンドに等しい存在の悪役。
特にMの死はシリーズそのものを変えるきっかけになったとし、時間の経過をシリーズで初めて本格的に描き、主要なキャラクターも不死身ではないことを知らしめた、と語りました。
メンデス監督がこのインタビュー中に語った、お気に入りシーンは二つ。一つはボンドがMI6で受ける言語連想検査で、もう一つはスコットランドのスカイフォールへ向かう途中、ボンドとMがアストンマーティンを降りて会話する場面。Mの台詞「Orphans always make the best recruits」はまるで「俳句」のようだった、とも語っています。
初期の草稿では、シルヴァがボンドと休戦し共闘する設定になっていたそうです。しかし、ボンドは一匹狼であり、対等の立場の男は不要との結論に達し、この案は放棄。
ガンバレル・シークエンスの撮影はスケジュールの一番最後で、その頃にはハッピーでリラックスした気分に。ダニエル・クレイグがモニター・チェックをした唯一の映像がこのガンバレルだったのだそうで、彼にとってこれがいかに重要なのか理解できる、とのこと。
メンデス監督がもし今『007/スカイフォール』の映像を変更できるとしたら、それはユニオン・ジャックの旗めくホワイトホール屋上でボンドが佇むシーン。当時はシリーズ50周年記念を迎えており、オリンピックでは女王陛下がボンドとヘリコプターからジャンプ、国威発揚の機運がこの作品にも影響している旨をメンデス監督は指摘。過去10年間の無能な保守党政権を振り返れば考え直したくなる、と笑いながらコメント。
メンデス監督は、批評的にも興行的にも成功を収めた『007/スカイフォール』には満足気。しかし、続く『007/スペクター』については、脚本に取り組める時間が少なかった旨を語っており、不満の残る結果となったようです。